彦根周辺吟行(6)          古谷彰宏

 

  木彫りの里(木地師の里

 JR東海道本線・醒ヶ井(さめがい)駅下車、約3キロ。醒ヶ井養鱒場へ行く途中の右手にある木彫の技術者集落。 JR 醒ヶ井駅 から養鱒場行きのバス・上丹生下車。尚、居醒の井から徒歩では清流に沿って約20分程度。

(見所:彫刻の見学、炭焼き、チュリップ畑、清流、門川の梅花藻、コスモス畑、猪垣、芋水車など)

   関西の俳人数名を炭窯に御案内した際、来週の土曜の午後、炭窯から「炭出し」をすると知らされた。当日昼過ぎに見に行くと、里人と若いボランティア達が車座になって、御飯・トン汁・漬物などで昼食の最中。たちまち、「あっ、先週の俳句の人ですね」と声を掛けられ、車座の席を譲られて、トン汁や御飯をご馳走になる破目になり、丁度持っていた御菓子を供出し仲間入り。  

  炭の窯出しは、里の長老にボランティアを含む若い人達が丁寧に教えを受けながら、炭窯の前の耐熱煉瓦を外し、土埃の中で入口を確保、そこから一人が筵に少しづつ載せた炭を運び出す。

   窯から運び出された炭は、炭材を立てて焼く為に、下10センチ程は生焼けで炭になっていない。そのままでは使う時に煙るので、この部分を鋸で切り落す必要がある。    

このことを初めて知った僕も、若いボランティアの人達や里人も、鋸を手に手に、炭切を始める。長い炭を切り揃える必要もあり、炭の窯出し仕事の大半は、この炭切り仕事。皆、顔を真っ黒にしながら、黙々と鋸を引く。

 

大方は鋸仕事炭出しす      古谷  彰宏

 

炭焼きに集まる礼儀正しい若者達と、炭焼きの技術の伝承に懇切丁寧に応える長老、よそからの飛入りが、皆顔を真っ黒にしての協同作業、作業が終わると、炭窯近くのクレソンの生える渓で顔や手を洗い、ジュースで乾杯する。木地師の里は、そんな温かい人々の里だ。

 

村おこしはげむ若者炭を焼く   南上 加代子

 

  帰りに漬物をお土産に呉れた里人に、芋水車のことを尋ねると「自分の家には無いが、隣の家には有るはず」とお隣さんに声をかけてくれた。

「川の向う側の店に里芋を売っています。芋水車は外に出して置くから、何時でも使ってください」と持ち主が使い方を教えてくれた。

  早速、御礼に出始めのミカンと里芋を買う。養鱒場から流れる清流から、この里へ引く門川の堰を上げてくれ、芋水車に里芋を入れて試運転開始。


芋水車

            

  「昔、芋水車は、山仕事に出かける前に里芋を入れ廻して置き、夕方家に帰って、綺麗に剥けた芋を食べたのですか?」と聞いた処、「とんでもない。そんなに長い間廻していると、芋が削れて無くなってしまう」との返事。

  確かに、15分位で綺麗に剥けてしまう。     


剥けた芋

   以来、僕はここの里人に「俳句の人」と呼ばれ、時々、俳人を御案内しては、この芋水車を借りて、里芋を綺麗にして、おみやげに持ち帰って頂くことにしています。

何時もチョットしたお菓子をお礼に持参するのですが、その度に遠慮されつつも、「コスモス畑が終わったら、チューリップの球根を30万個植えるので、また手伝って下さいね」などと言われています。

 

     堰を上ぐ木地師の妻や芋水車   古谷 彰宏

 

平成16年11月

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