【6】初心者の作句態度 実感を得るために
Q.作句にあたり、対象を実感で捉えることを心がけています。
しかし、実感の句をうまく作れた、と思っても、「実感ではなく、説明になっ
ている」というご指摘を受けることがあります。
そのような句を、後から読み直してみると、確かにどこか作為的だったような
気もします。
作句の場で、「実感」を得るためには、具体的にどのような注意が必要でしょ
うか。
A:基本的な態度は、以前何度か説明しました。
つまり、興味を持った対象の前に立ち、それをじっと、集中して見つめることで
す。
これだけだと、簡単に思えますが、いくつかの注意が必要です。
@対象から自分の中に飛び込んでくるものを捉える。
物を見ながら、色々考えるのは構いません。
しかし、対象を頭の中でいじくりまわして俳句にしてしまうのはいけません。
それでは、理屈の句になってしまいます。
作者の純粋な驚きが伝わってこないどころか、類想句になってしまいがちです。
本当の驚きは、自分で考え出すものではなく、向こうから突如やってくるものです。
気に入った物を三十分ほど見ていると、一瞬何かが動きます。
その驚きが実感です。
それを十七字で表現するのです。
A対象との間合い
句にしようとする対象との距離ですが、これは対象が何であるかにもよりますが、
近すぎても離れすぎてもいけません。
近すぎたら、細々と見てしまいすぎ、驚きというより、説明の句になってしまいます。
また、離れすぎていても、実感を得るだけの正確な把握が困難になります。
大景を描くとなれば話は別ですが、最適な距離は3mくらいでしょう。
昔、虚子先生と吟行した時、彼がじっと立ち止まっておられるのを見ました。
何もなさそうなのに、一体何を見ておられるのだろうと思い、私もその方を
窺っていました。
それは蜘蛛でした。
この蜘蛛で先生は二十句ほどお作りになりました。
これは@にも言えることです。
以上のことに気を付けて吟行に出てください。
実感の句を作るには、対象をじっと見つめる、それ以外に方法はありません。
今年も良い句を作られるよう、願っております。
平成13年1月
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