今月の緑樹集

緑樹集2月号の巻頭から三席の作品と主宰の選評をご紹介します。


八尾 山本 三才
神の鶏ながらに羽抜け免れず
白面の菊人形の憂ひかな
枝先に花ありながら萩黄葉
子規句碑に触れんばかりに柿たわわ
一汁の贅とす朝な菜を間引く
雨の夜のつれづれに酒温むる




狭山 古谷 彰宏
草矢射る勧請縄を超ゆるまで
明日香風棚田の案山子袖を振る
先陣は雄雌どちら鷹渡る
高みなる大和棟より鵙高音
寺宝展済むや一気に冬支度
稲雀遊行柳をよりどとす


香芝 小西 須麻
もんどりを打ちたる鹿や角を伐る
千切り捨つ矢塚のへくそかづらの実
石垣の崩れし棚田稲を刈る
陀羅尼助竈の暗し昼の虫
溝蕎麦や土管の吐くは金気水
夕鴨の空を仰ぎて衛士帰る




主宰の選評

  
枝先に花ありながら萩黄葉 山本 三才
萩は秋早く咲き、庭に秋の訪れを告げる。やがて萩の葉は黄葉してゆくが、茎の先には花が咲き残っている。
惜しまれながら咲いている萩の花に哀れをおぼえる。
寺宝展済むや一気に冬支度 古谷 彰宏
寒い冬が長い北国の人々には、寒さに備えての仕度は大仕事である。
大きな寺に秘蔵の宝物展示会を催し、終るころは秋も深くなっている。
大掛りな寺宝展がやっと済むと、後は一気に寺の冬支度に忙しくなってくる。

溝蕎麦や土管の吐くは金気水 小西 須麻
「みぞそば」は、タデ科の一年草。四〇センチくらいで薄紅色、淡緑色などの細かい花が湿地や水辺に生える<秋>。
土手などに土管から水を吐き出しているが、水中に溶けて含まれる鉄分が多いので、土が赤黒い色となっている。
溝蕎麦は、金気の水でも平気で咲いているのである。