平成21年メール句会全入選句

21年の特選を皆で選びましょう。
今年の入選句は438句、 良いと思う俳句、お好きな俳句を10句選んで、選句フォームよりお送りください。
締め切りは、1月7日、結果の発表は1月13日頃です。
選句はこちらから


1	意気やよしとぞ褒めらるる寒稽古	
2 スコップの刺さりしままに畝凍てぬ
3 産土に保存樹のあり小鳥来る
4 初空へ上がる無人の観覧車
5 数へ日や沙弥は午鐘を撞き忘れ
6 大広間雪見障子を高く上げ
7 冬至なれ電柱長き影を曳き
8 縄跳びが宿題といふ冬休み
9 筆始背筋伸ばして墨を磨る
10 葉牡丹の描く寿や駅花壇
11 カレンダー取り替へながら年惜しむ
12 家族みな一路順風去年今年
13 回し読む本の届きぬ冬籠り
14 吉と出て血の騒ぐなり初みくじ
15 塾の前子を待つ親は懐手
16 新調の足袋の固さも初稽古
17 年明くる三輪の神鼓の轟きぬ
18 七種の定かならざる粥となり
19 染めたての髪黒々と初鏡
20 大楠の襖囲ひや飾り焚く
21 湯の町を貫く川のおぼろかな
22 団欒に息をひそめし嫁が君
23 彼の手を借りて結ひたる初みくじ
24 頬かむりとらずおたぬきさま拝む
25 木槌では割れぬパックの鏡餅
26 廊凍てて鶯ばりの高鳴らず
27 ぼろ市や父も担ぎし歩兵銃
28 雪吊の風に唸りて満を持す
29 坐禅堂籠りの僧の白い息
30 初富士の薄紅にビル谷間
31 雪しんしん赤き尾灯の遠ざかる
32 裸木となりし街路樹空広し
33 矍鑠と赤きマフラー老教授
34 ふともらす友の一言初笑
35 参拝の帰りの男懐手
36 長生きをしてくださいと初便り
37 どよめける利根の河原の初日の出
38 建国日空に国旗と安全旗
39 香遊びして時過す春の宵
40 試歩始む春立つ日とぞ思ひたち
41 春風に揺るる鰈の天日干し
42 潮風にはや満開の梅の宮
43 踏青や佐保より佐紀へみ寺訪ふ
44 白壁へ墨絵を描く枯木影
45 街路樹の根方大事や草青む
46 黒檀の大衝立や盆の梅
47 佐保佐紀の遅速の梅の寺を訪ふ
48 神楽笛高まれば鳩飛び立ちぬ
49 土手焼くや空き缶数多焦げゐたり
50 鉢巻のごとく縄掛け雪囲
51 鶯や教会までの道すがら
52 コンサ−ト終へてネオンの街おぼろ
53 菊の紋透く春障子開けにけり
54 手に句帳杖は不要と梅探る
55 筆勢で知る健康度賀状読む
56 幕末の砲台訪ひし建国日
57 ありつたけ布団を干して客迎ふ
58 よろぼふて黒光りせし地虫出づ
59 春節祭赤提灯の金の文字
60 村起こしの目玉といはむ盆梅展
61 暖かな日を賜りて野辺送り
62 嬬恋の黒ぼこ畑にキャベツ苗
63 日を刎ねる鈴をつけたる納め針
64 風水にかなふ地形や杉植うる
65 バス停の風に水仙匂ひけり
66 医師よりの旅行許可出て春を待つ
67 寒月や清め塩ふる通夜帰り
68 虎落笛湖岸の松の減るばかり
69 取り敢へず添へ木して垣繕ひぬ
70 屠蘇に酔ひ重たき口を開きけり
71 かたまつて渡船を降りる春着の子
72 ロザリオの少女寒紅引きにけり
73 雨戸打つ春一番や妻は留守
74 春昼の屋台込み合ふ六区かな
75 初夢の思ひもかけぬ吾が仕草
76 残雪に托鉢僧の素足かな
77 日だまりは一足早き梅の花
78 地図を手に降りし駅舎に雛飾る
79 かしこまる記念写真や初句会
80 雪解の月の雫の落ちにけり
81 ボンネットバスに列なす園うらら
82 春一番自転車押して登校す
83 除雪車の手間取るほどや今朝の雪
84 サーフアーを眼下の熊野古道かな
85 それぞれが枝を占拠し囀れる
86 耕せり腰痛ければ腰伸ばし
87 四温晴れ汚れ気になる大玻璃戸
88 水温む鯉の動きの鈍からず
89 息切つて駈け来る子等と野に遊ぶ
90 目まぐるし晴雨日替り二月尽
91 立ち消えとなりし縁談春寒し
92 箒目に弾となりたる地虫かな
93 芽木の雨厄除大師在す山
94 護符を貼る長押に届く雛かな
95 春の雪俳句ポストに積もりけり
96 摺れ違ふ人も朧に花灯路
97 大琵琶のこのもかのもの諸子舟
98 谷戸奥に仰ぐきりぎし風光る
99 丹田に力をこめて春耕す
100 鶴の居て亀の居らざる寝釈迦かな
101 聞き役になりて捗る毛糸編む
102 遥かなる富士は真白や若布干す
103 げんげ咲く史蹟を望むひとところ
104 水脈引きて縦横無礙の残り鴨
105 同病の相憐れみて花粉症
106 日脚伸ぶ下校の列の崩れがち
107 名ばかりの川とはなりし草青む
108 蘭の花蜜の涙をこぼしけり
109 リフオームのショウルーム見る日永かな
110 徐々に減る夫のクスリや春を待つ
111 風光る高層ビルは窓ばかり
112 露天湯の塀にのりたる山笑ふ
113 珈琲にミルクの渦や春の昼
114 阿羅漢の前掛け飛ばす春一番
115 啓蟄や土に塗れし犬の鼻
116 細腕のたつき支へし針納め
117 放たれて流れに競ふ稚鮎かな
118 木々芽吹き萌黄色なる仏母山
119 さえずりに歩調合せて並木道
120 日向ぼこ小さき地震に面あげぬ
121 裏木戸に一輪咲いて藪椿
122 泣き顔の羅漢の像や涅槃西風
123 仕事終へそれからのこと雛収む
124 童心に返りぺんぺん草鳴らす
125 球さがす少年に蛇穴を出づ
126 入母屋の並ぶ街道初燕
127 オルゴール鳴らして納む雛かな
128 マシン油の匂へる軍手木の芽風
129 二の膳が女将の自慢木の芽和え
130 武家屋敷拝見しつつ梅を愛で
131 御城下の低き土塀や青き踏む
132 小流れの止みたるところ水草生ゆ
133 石あれば石に座しけり花疲れ
134 落慶の寺を寿ぎ花万朶
135 見おろしのなぞへ一面つくづくし
136 引越の荷の手付かずや花は葉に
137 花びらを喪服につけて通夜の客
138 山門に吸はるるさまの落花かな
139 燕来る拝観謝絶の古刹にも
140 蜷の画く迷路は出口なかりけり
141 陽炎へる琵琶湖大橋まのあたり
142 手鏡のごとき余呉湖や山笑ふ
143 袖口の殊に煤けし紙衣かな
144 馬市のたちし街道燕飛ぶ
145 マンションの改装工事燕来る
146 堂前に会式の後の花の宴
147 花人にまじりて犬の散歩かな
148 花筏風のまにまに逆流す
149 花冷やライトアップのお濠端
150 切り通し出るや谷戸奥風光る
151 わけもなくただ動くのみ蝌蚪の群
152 山峡の一戸に大き鯉幟
153 夢殿へ長き築地や寺薄暑
154 蝮草古墳の杜の暗がりに
155 招かれて桜を見に来お堀端
156 ロープ張り芝生養生青嵐
157 近づくを咎むる仕種藤の虻
158 溝さらへ馴染みし顔の老けにけり
159 菖蒲見る四阿のうす暗きかな
160 吊し雛揺らして稚児をあやしけり
161 灯台に上がるなの札行々子
162 本堂に人影を見ず藤盛り
163 ジャスミンの香る骨董市通り
164 茅葺の低き山門飛花落花
165 牛蛙何の合図ぞ鳴き交わす
166 子燕ととても思へぬ宙返り
167 代田掻く老いや挨拶応へなし
168 麺処讃岐平野の麦は穂に
169 緑陰に屋敷神在す旧庄屋
170 ようお詣りやすと甘茶を注ぎ呉るる
171 水門を抜けて反転夏燕
172 道草の鞄ころがる花の土手
173 耀ふて鴟尾のまぶしき五月かな 
174 雲海の紅一点の日の出かな
175 渓流の苔むす石や九輪草
176 山の辺の道に目立ちし銀竜草
177 絹糸のやうな細根や草を引く
178 宝塔に常磐木落葉無尽蔵
179 欄干に湖中句碑見て春惜しむ
180 緑さすどの道とらむ遊歩道
181 むらさきの今が食べごろ桜の実
182 駅出ればすぐに参道木下闇
183 夏帽子飛ばされまじな浮御堂
184 花の種蒔く吉日を選びけり
185 教はりて寺の裏庭薬狩る
186 芹洗ふ一束づつの流れかな
187 踏切の音を遠くにのびる摘む
188 木漏れ日に苔の滴り煌めけり
189 一泊の遠来の児に武具飾る
190 山道の果てたるところ青山河
191 卯の花を愛でて吊り橋渡りけり
192 剥落の千手観音春惜しむ
193 髭面の目深に被るパナマ帽
194 まくなぎをものともせずに野外句座
195 改修のなりし山門緑さす
196 プランター所狭しと夏野菜
197 洗ひ髪無造作に結ひひとりの夜
198 ペンキ塗り終へ一服や梅雨晴れ間
199 音立てて五人家族の西瓜食ぶ
200 襟足の白きを誇り更衣
201 飽きもせず推理小説明け易し
202 梅雨くらし部屋と言ふ部屋昼灯す
203 夏草や有刺鉄線まで届く
204 時の日の日時計に日の射しくれず
205 日に香り風に香るや薔薇の園
206 梅雨の我読書三昧はばからず
207 梅雨晴れ間商店街にちんどん屋
208 夏川の合流点や竿光る
209 刈り揃ふ芝につんつん捻り花
210 純白やトラピスチヌの庭のバラ
211 鉢植の蛞蝓退治日課とす
212 蛍火や闇の底より水の音
213 小さき花かたまり咲ける道薄暑
214 草刈りし休耕田の広きこと
215 天を衝くヒマラヤ杉の樹下涼し
216 波音のひびく朝寝の旅枕
217 箱で買ふトマト大小詰め込まれ
218 宇宙より聞こえくるかや閑古鳥
219 帰るさの星の明りや螢狩
220 鳩時計鳴る山荘は明け易し
221 観音像青葉雫にそば濡るる
222 梅雨晴間鳶と鴉の喧嘩らし
223 老鶯の声澄み渡る過疎の村
224 キャンパスは出入り自由青嵐
225 法燈や香炉の灰の梅雨湿り
226 昨日敷きし藁にしつかり瓜の蔓
227 尼寺の跡と碑があり花菖蒲
228 梅雨ごもり習ひお覚えのパソコンと
229 鮎茶屋の一軒となり簗を守る
230 城跡に古井戸ふたつ草茂る
231 埒もなき思案に尽きて明易し
232 客待ちの車夫の歯白き日の盛り
233 代掻きて泡ふく泥の海となる
234 四隅には何もなかりし夏座敷
235 自己主張ばかりする子の髪洗ふ
236 町内でしめしあはせて水を打つ
237 夕焼けに日々手を止むる厨窓
238 ハーブ園後ろの山のほととぎす
239 作り瀧ここより万葉歌碑の道
240 甚平や毛脛の長き優男
241 頂上に着くや否やに霧の湧く
242 梅雨明けて対岸の灯のまたたける
243 汗凉し太極拳の朝稽古
244 待てど来ぬバス恨めしき炎暑かな
245 闘竜灘風に畳みし日傘かな
246 鳴き声は美しけれど羽抜鶏
247 燠白く残す竈や土間涼し
248 かばかりの水に戯れ雀の子
249 くろがねに暮れ行く山のみどりかな
250 シグナルは赤の連続炎天下
251 雨脚に誘はれ動くあめんぼう
252 旧市街見下ろす聖母像涼し
253 魯山人旧居涼しや大藁家
254 河骨の花を揺らせる手漕ぎ舟
255 日盛りに影が地を這ふロープウェイ
256 鉾町を巡るツアーの列長し
257 暮方の空のみづいろ行々子
258 留守番の丸かじりするトマトかな
259 海に向く蜑の寄せ墓青葉潮
260 いつぱしの農婦気取りに草を刈る
261 ひぐらしの坩堝と言はん露天の湯
262 古書市や糺の森の樹下涼し
263 退院は嬉し炎暑の家なれど
264 鷹舞へる下に修行の岩場かな
265 唐崎の松は今しも蝉しぐれ
266 ケーブルを降りて辿りし展墓かな
267 すれ違ふ浴衣の人の空似かな
268 川沿ひの道はいつしか虫の秋
269 瀧見茶屋古き栓抜使はるる
270 奔放の萩括らむとかき抱く
271 惜しまずに送る拍手や汗ばみぬ
272 一蔓に一果のメロン日々太る
273 参道を汚す楊梅樹齢百
274 夏草の刈られて広し河川敷
275 新涼の路地に研師の店開き
276 待ち合す図書館の前夏休
277 うすべりにごろ寝楽しむ帰省かな
278 カトリック墓地も賑はふお盆かな
279 回廊に新涼の風吹き渡る
280 戯れに付きたる鐘の音涼し
281 空蝉や塀の高みにしがみつき
282 子つばめの生きんがための口を開く
283 吹き抜ける風が馳走の夏料理
284 満潮の波迫りくる砂日傘
285 警策の音のみ聞こゆ安居寺
286 孫帰り仏も帰る送り盆
287 食べ物を詫びつつ捨てる敗戦忌
288 唐崎の老松今し蝉しぐれ
289 真向に刃筋を通す大西瓜
290 白河の関まで八里雲の峰
291 流燈の消え果てるまで佇みぬ
292 今朝もまたひとつ見つけり蝉の穴
293 なすべりそ山の歩板の露しとど
294 ベンチにて推敲すれば色鳥来
295 開山忌近き寺町溝浚
296 急がねば霧に呑まるる避難小屋
297 敬老日カラフルな杖貰ひけり
298 結界の内なる浄土昼の虫
299 桟橋に魚臭匂ひて秋暑し
300 秋晴や集合場所は仁王門
301 先を急く夕日を背ナの秋遍路
302 灯ともれる渡り廊下に虫を聞く
303 当分は自給自足や夏野菜
304 秋暑し油浮きたる船溜り
305 城郭の如き別院親鸞忌
306 睡蓮の並びて咲くや池の中
307 日陰出て一歩ためらふ残暑かな
308 萩の風よろし法話の続きけり
309 分け入れば銀波果てなき芒原
310 旅鞄詰め終え夜の長きかな
311 見はるかす山に白雲秋晴るる
312 古戦場跡とて柳散るばかり
313 四阿を囲める木々や蝉しぐれ
314 苔大事石仏大事松手入
315 大仰に揺らげる四手や風の秋
316 池の面つぶやくごとく木の実落つ
317 道をしへ道ををしへず屯して
318 もつれつつ疎水に遊ぶ秋の蝶
319 遣水に色鮮やかな秋の草
320 行者宿霊水に浮く新豆腐
321 指先にとまる蜻蛉愛でにけり
322 秋気澄みおだやかなりし明石の門
323 屋上は手さぐり歩き花火待つ
324 国分寺跡は公園天高し
325 座り良き腰掛石や木の実落つ
326 通し鴨濠を巡りてかくれんぼ
327 こぼれ萩はや暮なずむ奈良井宿
328 遠富士に紅の差したる秋入日
329 実習田覆ふネットは蝗除け
330 来るはずの台風が逸れ庭仕事
331 急な坂登る月夜の城下町
332 敬老日長寿の猫を労わりぬ
333 露けしや格さんの墓香絶えず
334 山の日に飴色に透く芒かな
335 山上の雑木隠れに秋入日
336 里祭奇声を発し撥を打つ
337 一陣の風に光るや花芒
338 夕映えの高尾山上薄紅葉
339 国と国分かつ大河や水澄めり
340 清水の舞台秋風ほしいまま
341 走り過ぐ雲もまた良し月今宵
342 銀杏にかぶれてならじ遠まはり
343 古戦場踊太鼓のひびきけり
344 湖の風冷えて来たりと句帳閉づ
345 いつの間に消えし漁火鷹を待つ
346 雨ながら人出の離宮観月会
347 湖の逆白波や鳥渡る
348 松越しや離宮に遅き月昇る
349 僧院を訪ふは高きに登るなり
350 遠目には下駄浮くさまや鴨の陣
351 献上の稲を残して刈られをり
352 石塊も墓碑の一つや露深し
353 美術館長蛇の列へ秋の蝶
354 遠富士のぽつかり浮かぶ野分晴
355 開墾の地と聞く畑草の花
356 虫すだく離宮に残る舟着場
357 富士見えずとも鏡凪初鴨来
358 蝗採り競争もある収穫祭
359 花消えて茎のあはれや曼殊沙華
360 過疎の村草一面の虫の声
361 こんなにも人がいたかと村祭
362 園丁や人を横目に松手入れ
363 底抜けに青き天心鳥帰る
364 屏風岩実生の松の色変へず
365 湯上りの下駄音つつむ虫の闇
366 台風のそれて上野にこの人出
367 シャボン玉港の見ゆる丘に吹く
368 宮島の松の間に間に紅葉かな
369 富士裾野芒ばかりの演習地
370 遊歩道阻む落石野菊濃し
371 たんぽぽの返り花して異人墓地
372 隠れ宿包む野山の錦かな
373 ご法話の隙間風など気にならず
374 たより書く手元の暗き秋思かな
375 威勢よく笛鳴る薬缶今朝の冬
376 三蹟の二蹟の揃ひお風入
377 返り花てふも十指にあまりけり
378 すがれ虫鳴くや荒磯の遊歩道
379 冬仕度せかせる山の照り翳り
380 入れ歯われ河豚雑炊を吹きくぼむ
381 冷まじや噴煙の灰頬を打つ
382 稲架並び砦のごとき棚田かな
383 境界石落葉に赤き十文字
384 本堂へ木の実降る磴のぼりけり
385 淀君の墓標のあたり雪婆
386 落葉急狭庭を埋む色とりどり
387 旅予定ありてはかどる年用意
388 さきがけは池畔の一樹櫨紅葉
389 拾ひ来し椎を家人はよろこばず
390 配達の自転車で来る夜学生
391 矍鑠と印半纏松手入
392 稲架かけて莚に憩う農夫かな
393 やや寒や長き廊下の永平寺
394 雲間より島に架かれる秋の虹
395 診察を待つ間のマスク息苦し
396 摂待は農婦手料理今年米
397 ダム底に水尾引くは鴨来たるらし
398 ぼろ市に張子の虎は首を振る
399 改札を出れば北山しぐれかな
400 着膨れて椅子に沈みておりしかな
401 滅多斬りされ鮟鱇の口残る
402 杖借りて上がる石段紅葉狩
403 築山の日当たるところ返り花
404 二階より見下ろす谷の紅葉濃し
405 便利屋と呼ばれて今日は松手入れ
406 露天湯に出没騒ぎ雪女郎
407 鵙高音施錠確かめ旅に立つ
408 うたた寝かはた瞑想か日向ぼこ
409 干し物のからりと乾く小春かな
410 健康を取り戻したり年用意
411 天井は幾何学模様暖炉燃ゆ
412 登校児見つつ門掃くちゃんちゃんこ
413 「おおきに」と客を送るや秋袷
414 おでん種残るはいつも同じ物
415 ぼろ市や刀に並ぶ鉄兜
416 意を決し戸外に出れば冬ぬくし
417 異人墓地見下ろす丘の帰り花
418 青淵に礫落としの木の実かな
419 年忘れ米寿の翁芸達者
420 賀状書く万葉がなのうるはしく
421 早早と聖樹飾られ子沢山
422 鳥打帽目深に被り日向ぼこ
423 日の差して白さざんかの寂しからず
424 あれ手抜きこれも手抜ひて年用意
425 煙突は精錬所跡山眠る
426 寒禽の声にぎやかに夫婦楠
427 白息のぶつかり合ひて糶の声
428 あちこちに歳暮の礼の長電話
429 ひとり居や透き通るまで大根煮て
430 人影の失せし公園木の葉散る
431 水鳥の池に戯れ逆立ちす
432 片方は見えず鵯鳴き交わす
433 あたふたと失せ物探す師走かな
434 ただならぬ不景気なれどおでん酒
435 禁酒説く主治医も仲間忘年会
436 足元に栗鼠の来てをり冬木立
437 外出の二の足を踏む冬の雨
438 久々のネクタイ締めて札納