9月15日締め切り分
1 「行ってきます」の声すがし今朝の秋
2 いのこづち触れよと四方に枝伸ばす
3 コロナ禍の菓子折届く敬老日
4 コロナ禍や平和問ひもす広島忌
5 どの道と言はず木犀匂ひけり
6 のれん外し戸の開け閉ての増えて秋
7 廃屋に大樹の金木犀匂ふ
8 ひとつには平気で生きて獺祭忌
9 伊根舟屋万国旗めき烏賊を干す
10 古墳と 坂道ゆるり 露どころ
11 吾が髪もシルバー色や薄立つ
12 菜園に並ぶ自転車大西日
13 秋の田を撫で行きにけり明日香風
14 秋湿り五百羅漢の苔の色
15 秋草の庭を眺めの写経場
16 前を行く夫の帽子にいぼむしり
17 宅地化の行手を阻む青田かな
18 展望の眼下秋桜咲き初む
19 都心より富士山迄が鰯雲
20 土砂降りの雨の洗ひし青網戸
21 漂泊の詩人慕ふや夜半の秋
22 富士見ゆる裏道取れば葛匂ふ
23 片蔭も人影も無き通りかな
24 穂芒の初々しきを手折りけり
25 名月へ厨の小窓開けにけり
26 門前に置く茄子どれもへそ曲がり
27 アンテナはよき止まり木よ小鳥来る
28 ほんのりと川面の染むや秋夕焼
29 慰霊碑に荒ぶる風や長崎忌
30 稲の花児ら覗き合ふ学校田
31 稲架組んで山の端近き一戸かな
32 刈りたては風香ばしき刈田道
33 桔梗を咲かせ野道を淋しうす
34 思ひ草 思ひ 思ひにうつむきて
35 手水鉢打つ秋雨の長々し
36 収穫の蜀黍剥きて皮の山
37 秋の夜やパソコン前に四苦八苦
38 窓に寄り深呼吸する青田風
39 秩父なる札所巡りや草の花
40 昼餉の手止めて黙祷終戦日
41 朝刊や庭漂ふ金木犀
42 朝露に濡らす足元野球の子
43 長年のいちぢく嫌ひ返上す
44 天高しみるみる小さし熱気球
45 二回目の接種せし夜の髪洗ふ
46 日没や向日葵の花うな垂れり
47 萩の花夢二デザイン銀座かな
48 筆立に捨てかねている扇かな
49 病葉よ降れ実朝を偲ぶ碑へ
50 野路の秋鳥語聞き分けられさうな
51 露踏んで凡そ小さき墓を訪ふ
52 棗食むわんぱくの頃なつかしき
53 「ホトトギス」曝す旧字の潰れがち
54 コロナ禍のマスク金木犀匂ふ
55 もろこしのまず一粒の取り難し
56 一茎の早やも倒れし彼岸花
57 黄昏の沼辺のベンチ虫集く
58 仰ぎ見てときに屈み見萩巡る
59 孤児老いて語る八月十五日
60 三方に糸瓜を供へ獺祭忌
61 山も奥茶屋に商ふ弁慶草
62 四五枚の未だ傷無き大芭蕉
63 秋の風京の坪庭薄明り
64 秋最中仙人掌の花開くとは
65 丈をなすなぞへの草に虫すだく
66 色変へぬ松にびわ湖の風渡る
67 震災忌万年筆を丸善で
68 石灯籠まばらに囲み曼珠沙華
69 草の露今は昔の富士見茶屋
70 大鯉や少し澄みたる町川に
71 男坂上り切る迄竹の春
72 昼灯す教員室や夏休み
73 虫の音に音量上げるテレビかな
74 朝涼や 厨に茶粥 噴く匂ひ
75 闘ひに土掻く鹿や睨み合ひ
76 韮の株ほったらがしに花咲ける
77 保護ねこの名づけ親なり今日の菊
78 露の身やしこたま貰ふ飲み薬
79 いつの間に軍手に付きし蝉の殻
80 金銀の木犀の香を競ふ庭
81 ハンチング被り背高や案山子翁
82 ゆで汁を染めて一塩衣被
83 遠景を閉ざすフェンスの葛かずら
84 海沿ひの垂水のカフェ爽気来る
85 月変はり空も変はるや鰯雲
86 後ろから押す秋風や切通し
87 山門にわびを添へたる芒かな
88 秋の蚊の刺す傷口の腫れにはれ
89 十字路に佇ちて初秋の風にあふ
90 身に入みて戦士の遺句を拝読す
91 団栗を踏まぬは難し切通し
92 着こなしはユニクロ製や生身魂
93 虫の音に五体委ねて旅の空
94 低速で信号行くは稲刈り機
95 彼岸花をうつむき愛づる河童像
96 夫とわかる玉蜀黍を食べし跡
97 無花果や思い出の母若々し
98 野仏に誰か手向けし草の花
99 夕風の土手に聞き留む虫の声
100 藍窯の 藍のつぶやき 秋涼し
101 隣家の無花果匂ふ垣根越し
102 老人会占める校庭夏休み
103 獺祭忌糸瓜に献句したためて
104 隧道の出口入口違ふ蝉
（投句者26名）