秋灯下闘病日記克明に          みどり
七堂の伽藍跡とや露しとど 喜代子
露けしや文机ひとつ子規の居間 千枝子
露天湯に酌んで至福の月見酒 忠利
昼のバス待つは吾のみ花すすき 豊治
昼の虫艀ばかりの船溜り 隆雄
胸元に白檀匂ふ秋扇 瓔子
幼稚園閉鎖となりて虫すだく 裕子
小流れにのけぞつてをり枝垂れ萩 斉
灰色の雲は西へと野分前 貴美子
 

アイロンの余熱冷めゆく夜の長し あや子
死の砂漠越えて安堵の月仰ぐ   ロジー
庭を掃く露しとどなる竹箒    とめ子
ケセラセラとは行かず秋思かな  なぎさ
月明りベランダへまた物干しへ  サダ子
たくさんの穂に日の当り猫じゃらし継鳥
豚草とよばれてもなほ秋の草 一照
電子辞書頼りの夜学なりしかな 修三
自販機の窓の結露や霧の駅 領一
千じんの谷より仰ぐいわし雲 怜子


9月2006
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